今から十数年前の、今は退職してしまった先輩の話。
仮眠室には、二段ベッドが三つ置いてあり、北側に二つと南側に一つあって、そのうちの二つは向かい合わせになっている。
ある日のこと、夜間巡回や防災業務が終わった六人が、風呂を終えた順に仮眠室へやって来た。
この日は忙しく、皆が寝付くのには時間はかからなかった。
どれぐらい時間が経ったのかはわからないが、南側の仮眠ベッドが激しく揺れた。
南側の上の段の隊員は、眠いながらも薄目でベッドの縁に目をやると、誰かの手が縁を掴んで揺らしているのを確認したが、顔は見えなかった。
丁度、隊員からは、頭をすぼめて手だけが出ている感じに映っていた。
『ああ、誰かがイタズラしているんだな』と思い、そのまま無視した。
ところが、下の段の隊員は、揺れに気づいて起き上がったのだが、ベッドの外に見えたのは足だけだった。
彼は怖くなり、震えながら布団にくるまっていたそうだ。
そしてもう一人、北側の下の段の隊員が目撃した。
彼は、後ろ姿の女性がベッドを激しく揺さぶっているのを確認したのだ。
髪は乱れ、白っぽい(ぼやけてよくわからなかったらしい)服の女性だった。
彼は恐ろしくなり、いつの間にか気絶していたという。
霊感が無い私だが、幽霊は空気の悪い建物に住み着くものだと思うようになった。
この幽霊目撃もあれから一切無くなったが、建物自体には霊体験が数多く寄せられていて、私も人生で初めて体験してしまった。
もしかすると、この女性の霊も、場所を変えて出現しているような気がする。
今は自殺をされないような管理体制だけど、昔のように自殺が珍しく無い場所には、自然と霊達が集まってくるのかもしれない。
『pico(年齢30歳・♂)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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