私の通っていた小学校は、歩いて3分のところにありましたが、その小学校に片道4キロの道矩を歩いて通ってきていた子供達がいました。
子供達は校長先生から鈴を貰い(これは熊よけです)、峠道を越えて通ってきてました。
異変に気がついたのは、その小学生達でした。
峠道のある地点に到達すると、いつも決まって異臭がするというのです。
この情報から、山中に死体があるのではないかと睨んだ警察は山狩りを計画し、地元に対して協力を要請してきました。
そんなわけで、私も山狩りに借り出されました。
最年少者だった私は警察官とペアを組んで、道なき道を進み、ただならぬ気配に導かれて、程なく妙なモノを見つけました。
大きなミノムシの様なものが木の枝からぶら下がっているのです。
そしてそのミノムシ状のものに、尋常では考えられないくらいの蝶が群がっていたのです。
群がっている蝶の羽音の『サワサワ』という音が、辺りに響きわたっていました。
一緒にいた警察官はニヤニヤしながらミノムシを『棒でつついて見ろ』といったので、私は何のためらいもなく、持っていた鳶口でミノムシをつついてみました。
途端に蝶は飛び立ち、辺りは薄暗くなりました。それまでしていなかった異臭が鼻を突き、警察官は瞬時に嘔吐しました。
ミノムシは首吊り自殺体だったのです。
その後程なく自殺体は降ろされたのですが、不思議なことに、空を覆い尽くすほどいた蝶は、瞬時にいなくなってしまいました。
今となっては、蝶の種類までは記憶にありません(カラスアゲハだったか、オレンジ色に黒い斑点のあるものかのどちらかだったとは思うのですが、)が、蝶の羽音だけは、今でも耳に残っています。
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