百貨店の警備員をしていると、ごく稀に奇妙な事に遭遇する。
ある夏の、蒸し暑く静かな深夜2時頃、私は防災センターでモニターを監視していた。
眠い目を擦りながら巡回者からの定時連絡を待ち、一緒にモニター監視をしているもう1人の隊員とたまに会話しながら、ゆったりと時を過ごしていた。
そんな時、巡回者から無線が入った。
慌てた様子で聞き取りにくかったので、彼(A)がいる搬出の車専用の駐車場の前に私が向かった。
街灯が少ない裏手の百貨店の壁沿いにAの姿を発見した、と同時に赤い服を身につけた女性が横たわっていた。
女性は水商売風のスタイルで、靴は履いていなかった。というより、靴は最初から履いていなかったという感じ。
呼吸は微かに確認出来るものの、身元に繋がる物は探してもどこにも無いので、私は防災センターに警察へ通報するように伝えた。
10分ほどで警察と救急車が到着して女性が搬送された後、警察を防災センターまで案内し、防犯カメラに何か不審な物が映っていないか確認した。
あの駐車場に設置されているカメラに、Aが女性を発見する約20前に、ワゴン車から女性が放り出される姿が映っていた。
しかし、ワゴン車は一部しか映っておらず、ナンバーは確認出来なかった。
警察はその映像を観て「あ~なるほどな」と小声で呟いていた。
そして、警察がビデオを持って帰った後、私は報告書にその事を記入した。
後日、報告書を読んだ、百貨店が雇用している天下りの警察OBが一言。
「どうせヤクザ絡みの事件やろ。違法風俗店で働く嬢は、働いても借金漬けにされて放り出される。彼女もなんかあったんやろ。あの程度で済んでるところを見ると、ヤクというより男女絡みっぽいな」とのこと。
警備員をしていると自殺や事故に遭遇する確率が高くなるが、この手のヤバい系の事案は後味が悪すぎる。
『pico(年齢29歳・♂)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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