ガキの頃、超ビンボーだったが、クリスマス(兼オレの誕生日でもあったのだが)には日本橋の東急百貨店ででおもちゃを買ってもらい、その後「たいめいけん」でオレと兄貴はオムライス、オヤジはカレー、お袋はミートコロッケを食うのがしきたり(?)だった。
オヤジは職人だったが、兄貴は訳あって家を出てしまい行方知れず。
オレにあとを継いで欲しかったみたいだが、「好きな事やれ」と、大学に行かせてもらった。
仕送りまではしてもらえなかったが、地方の国立大学の寮にもぐりこみ、バイトだけでなんとかしてた。
だが、バイトが忙しくてなかなか家には戻れなかった。
大学4年の秋頃、オヤジが手術することになった。
胃ガンだった。
退院して、真っ先に食べたがったのが、「たいめいけん」のカレーだった。
小さい頃巨人のように思えたオヤジも、一回りも二回りも小さくなっていた。
胃を切ってるせいか、半分も食べられなかった。
オレはオムライスとラーメンを食った。
大学に戻ってしばらくすると、オヤジ再入院。
再発というか、手術で取りきれてなかったのだ。
見舞いに行ったら、さらに小さくなって頬のこけたオヤジがいた。
「たいめいけん」のカレーまた食いたいな、とか言ってた。
それから2週間ほどで逝ってしまった。
オレ今、オヤジが入院・手術した築地のがんセンターで医者やってる。
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