心霊写真などという現象が取り沙汰されるようになったのは一体、いつ頃からなのでしょうか。
私には知る由もありませんが、少なくとも20年近く昔、私の通っていた小学校ではすでにオカルトブームなるものが存在し、生徒達は花子さんや赤マントの話、こっくりさん遊びなど様々な噂を聞きつけては、皆それらに興じていました。
私が当時仲良しだったA子ちゃんに、心霊写真集なるものを貸してもらったのも丁度その頃です。
苦痛に歪む顔…に見えなくもない壁の染み。
怨念の篭った女の姿…に見えなくもない焚火の炎。
それらの写真は、まだ幼かった私でさえも少しばかり期待はずれで落胆させる内容、かに思えました。
しかし本を閉じたあと、一抹の違和感が私に残るのです。
その違和感の正体を私は考え続けました。
(そうだ)
(この表紙の写真だ)
その本の表紙には、赤い水着の女の子がひとり。
海水浴に来ているのでしょう、浜を背景に浮き袋を抱いてにこやかに笑う彼女の頭に、包丁のようなものがささっている。と、いうものでした。
この写真自体は特にインパクトの強いものでもないのですが、表紙を飾る肝心のこの写真が、本の中に納められてないようなのです。
私はもう一度、最初のページからその写真を探し始めることにしました。
半分ばかり読み進めた頃でしょうか。
私の耳元に生暖かい感触と共に
「探すな」
という声がしました。
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