大学時代の友達が死んだ。38歳だった。
俺は男で、そいつは女で、でも恋愛関係なんかまったくなくて、ただただ、普通の友達だった。お互いの恋愛の相談をしあったり愚痴をこぼしあったりするような関係だった。
8年前に乳がんになって手術を受けた。見舞いにいった。
「いやあ、まいったよ」とそいつは明るく言った。かける言葉がなかった。
それからは再発を防ぐための治療をしつつ生活を送っていた。
仕事もそれなりにこなしていたと思う。何度か飲む機会があった。
相変わらずだと言っていた。こっちも、そのままなんとかなるんだろうと気楽に考えていた。
数年前に、がんが再発した。仕事を辞めて治療に専念することになった。
メールでのやりとりは続いた。深刻な事態になるとは思わず、軽口ばかりのメールだった。
そうはいっても、なんとか生き延びるだろうと思っていた。
でも、死んでしまった。
生きているうちに見舞いに行けばよかったと悔やんだ。
遠かったから、忙しかったから、理由はいくらでもあったけど、そして、行ったからといってあいつを助けることはできなかったのははっきりしてるんだけど。
メールでだって、もっとちゃんといろいろ話したり励ましたりできたはずなのに、俺はそれをしなかった。
葬式に行った。行ったことのない町だった。
棺桶のなかのそいつは、昔と変わらない顔をしていた。
ご両親に挨拶をしてから帰ろうと思った。
お母さんの顔は、あいつにそっくりだった。
それに気づいた途端、目の前がぼやけてしまい、なにか言おうとしたら、涙が止まらなくなった。
おまえ、元気で生きていれば、ああいう感じのおばさんになったんだろうにな。もともとおばんくさかったけどな。
そう思ったらたまらなかった。
帰りの新幹線で酒を飲みながら、お母さんの顔とあいつの顔を思い出すたびに泣いた。
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