母親の存在って本当に大きい。本当に母ちゃんはかけがえのない人だった…。
母ちゃん、産んでくれてありがとう。ここまで育ててくれてありがとう。愛情をたくさん注いでくれてありがとう。一緒に笑ってくれてありがとう。一緒に泣いてくれてありがとう。たくさん相談にのってくれてありがとう。たくさん励ましてくれてありがとう。
俺の母ちゃんは本当にいい人だった。ごく普通の主婦なんだけど、そこらの主婦とはまた違う…明るくて元気で優しくて…本当に子供思いで、俺と妹のことを何よりも先に考えてくれる母ちゃんだった…。
『雄太と春美のためならなんだってしたげるよ??死ぬことだって怖くないわ』
これが母ちゃんの口癖だった…。
そんな母ちゃんが倒れたのは俺が小学6年のときだった。父ちゃんかなりびっくりして、急いで病院に連れてった。病院について医者に見てもらうと、とりあえず検査入院しましょうと言われ俺たちは家にもどった。検査入院は5日間。毎日欠かすことなく母ちゃんのお見舞いに行った。行くたびに母ちゃんはかなり嬉しそうな顔になって、ものすごい笑顔で俺たちを迎えてくれた。俺が母ちゃんの大好きなチーズケーキを買って持っていったとき、初めて母ちゃんが涙を流した。ありがとう、ありがとうって言いながら、顔をくしゃくしゃにして泣きながら食べてくれた。本当に大好きな母ちゃんだった…。
5日たち検査結果が出た。医者の表情が曇ってるように見えるけど…気のせいかな??そう思いながら結果を聞いた。
『落ち着いて聞いてくださいね…。あなた達のお母さんは胃がんです…。とても重いうえに進行が早くて…あと1ヶ月持ったらいいほうだと思います…』
頭が真っ白になった……あんな元気な母ちゃんとあと1ヶ月しか一緒にいられない…そう思うだけで涙が止まらなかった。
翌日母ちゃんにその病気のことを告げた。母ちゃんはびっくりしていたが、
『大丈夫や。母ちゃんそんな簡単に死なんから』と、作り笑いを見せて俺たちを安心させてくれた。そんな母ちゃんの優しさに俺はまた涙が出そうだった…。
1ヶ月の間に母ちゃんとたくさんの話をした。くだらない笑い話とか、最近あったこととかいろんな話。だけど、こうやって話せるのもあと1ヶ月だって思うと、本当に悲しくて…なんで母ちゃんが死んじゃうんだろうって、我慢できなくてトイレに行くふりして大号泣してたときもあった。
そして1ヶ月と少したったある日に、家に電話が入った。病院からだった。
『お母さんの容態が急変しました!!今すぐ病院に来てください!!』
父ちゃんが車を走らせ、俺たちは急いで病院に向かった。母ちゃん死んじゃダメ!俺と妹でずっと叫んでいた。
病院につき、病室の扉を思い切り開けると…母ちゃんの顔には白い布がかぶされてあった……。あんなに元気だった母ちゃんが、とっても冷たくなって、ピクリとも動かなかった……。
みんな狂ったように泣き叫んだ。俺も本気で泣きじゃくった。母ちゃん…なんで死んじゃうんだよ…。
母ちゃんが死んだあとに看護婦さんに話を聞いた。
母ちゃんが、病院でずっと俺と春美の自慢話をしていたこと。
夜中ベッドで、家族で撮った写真見ながら泣きじゃくっていたこと。
ずっと寝言で、『心配かけてごめんね』ってつぶやいてたこと。
涙が止まらなかった。泣き叫びたくなった…。俺と妹はこんなにも母ちゃんに愛されてたんだ…。
泣きながら家に帰ると、父ちゃんがビデオテープを出してきた。
『これ、母ちゃんに、【母ちゃんが死んだらこのビデオ雄太と春美に見せて】って頼まれてたから、見なさい。父ちゃんもまだ見てないから。』
父ちゃんはそう言いながら、デッキにビデオを入れた。ビデオには、まだ元気だった母ちゃんが映っていた。病院のベッドの上で微笑みながら映っている。母ちゃんはビデオの中で話し出した。
『雄太に春美、元気でやってる?あんたらがこれ見てる頃には、もう母ちゃんいないんやねぇ…。学校はどう?楽しい?ちゃんと勉強できてる?母ちゃん、ちょっと心配やけど、きちんと天国からあんたら見てるからね。しっかりやらなあかんよ~!あと、父ちゃんにも迷惑かけとらん?父ちゃんは、母ちゃんが選んだほんといい人やから、きちんと言うこと聞いて迷惑かけんようにするんよ!それと、こんな母ちゃんでごめんねぇ…。あんたらにたくさん心配かけて、その上あんたらの面倒をもう見れんくて、こんな母ちゃん、母親として失格やね…。』
母ちゃんは、さっきまで笑顔だったのに、急に泣きだし、涙声で話し出した。
『本当は母ちゃんもあんたらとずっとずっと一緒にいたかった。またいろんな話したかった。ずっっとずっとあんたらの成長見てたかった…。でも、それももうできないんやって思うと、本当に悔しいし悲しい…・。でもね…母ちゃん、死ぬことに後悔はしてない。生きてるうちに、父ちゃんと出会えて、雄太と春美産めて、本当に最高な人生だったと思う。こんな母ちゃんなのに、いままで一緒にいてくれてありがとうね。ずっとずっと天国で見守るつもりだから、母ちゃんの分まできちんと生きるんよ…!!それじゃぁ、お別れね…。本当にありがとう…ちゃんと幸せになるんやで…!!!』そこでビデオは途切れた…。
ビデオを見終わったとき、知らない間に大粒の涙がたくさん出ていることに気づいた。普段無口で頑固な父ちゃんまでもが、机に顔を伏せて声を上げて泣いていた。
ありがとう母ちゃん…
母ちゃん、大好き…こんなにも俺らのこと愛してくれてて…あんたは本当に最高の母ちゃんだったよ…俺は母ちゃんの子供で本当によかった…。
本当にありがとう…
母ちゃんが残した、天国からの贈り物は、今でも俺たちに元気を与えてくれる宝物となっている。
天国からのプレゼント
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