私には、親がいません。
私は小さい頃、施設で育ちました。まさに【天涯孤独】
でも、ひとつも不幸だと、思った事はなかった。
高校を卒業して、就職難の中、見事に医療事務の仕事に就職できた。
18歳の冬、職場仲間に誘われた合コンで、ゆうちゃんと出会った。
ゆうちゃんは、私より1個年上で。あっ!!1個上だけど、学年は同じだから、同級生になる。
ゆうちゃんが気になって、メアドを交換して。翌日から、ゆうちゃんと毎日のようにメールしていた。
そして、知り合って1ヵ月たった時に、デートに誘われて。
デートで遊園地に行ったんだけど、その帰りの車の中で告白された。
私は、ゆうちゃんが好きになっていて、嫌いになる理由がなかったからOKの返事を出した。
それからは、もう毎日が楽しくて仕方なかった。
その当時、私は病院の寮に住んでたんだけど、夜9時以降の外出が禁止されていて、それが凄く不満だった。
ゆうちゃんは、夜8時まで働いていて、土日も仕事でなかなか逢えない。
だから私は、付合って3ヵ月目に、ゆうちゃんと一緒にゆうちゃんのアパートで住む事にしたんだ。
それから、同棲生活が始まった。毎日が楽しかったよ♪
ゆうちゃんの、ご両親に挨拶もしたし。
ゆうちゃんのご両親は、とっても優しくて、親7がいない私にとっては新鮮だった。
付き合いだして4年がたった平成19年7月12日………。
ゆうちゃんが、交通事故にあった。
居眠りしたトラックが、ゆうちゃんの車に後ろから激突。
ゆうちゃんの帰りが遅いのが不安で、私はゆうちゃんの携帯に電話した。
そしたら、病院の医師が出て、ゆうちゃんが交通事故にあった事を知った。
私はエプロン姿のまま、ゆうちゃんが運ばれた病院に向かった。
待合室に着いたら、既にゆうちゃんのご両親とゆうちゃんのお兄さんが椅子に座っていた。
ゆうちゃんのお母さんは、私に気付いて私を抱き締めてくれた。
「祐介は助かるから!!だから神様に頼もうね?」ゆうちゃんのお母さんが言ってくれた。
それから5時間の大手術。
だけど、ゆうちゃんは助からなかった。
手術室から霊安室に移されて。
霊安室の白いベッドの上で、寝ているゆうちゃん。
私は、ゆうちゃんの顔に被さってる白い布をはいだ。
ゆうちゃんは、綺麗な顔してた。
まるで、寝ているように見えた。
顔に傷なんて一つもなくて。
ただ、衝突した激しさが強く、両足を車の前部分に挟まれて両足が無くなってた。
でも私は、涙が出なかった。
ゆうちゃんのご家族は、号泣してるのに、私は涙一粒も出なかった。
なんで、涙が出ないの?
凄く辛くて、寂しくて悲しいのに、涙が出ない。
事故にあったのが午後だった為、お通夜は翌日の午後⑥時からだった。
私は何もする事がないので、一人でアパートに戻って。
ゆうちゃんがいないアパートに、戻った。
翌日の夕方、ゆうちゃんの実家に向かうと、雨がシトシト降っていた。
ゆうちゃんの実家に着くと、玄関先は大勢の黒装束の群れであふれかえっていた。
友達に、会社の人達に、近所の人達。
私は受け付けを済ませて、ゆうちゃんのご家族に挨拶を交わし、お焼香の列に並んだ。
お焼香を済ませると、私はゆうちゃんのお母さんから呼ばれて、居間に案内された。
するとゆうちゃんのお母さんは、ゆうちゃんから預かっている物があると、小さな紙袋を手渡された。
中を見ると、白い包装紙にピンクのリボンがかかっていた。丁寧に包装紙をはがすと、黒いフェルトの箱が姿を出した。
中を見ると、小さなダイヤのついた指輪が入っていた。紙袋の中に、手紙も入っていて、その場で読んでみた。
「さっちへ。
これは結婚指輪のつもり(苦笑)
付き合いだして4年たって同棲して3年9ヵ月たったよね?もう俺のモノにしていいかな?
さっちは俺の彼女だけど他の誰にも渡したくないから結婚しよ?
すぐにとはいかないだろうけど、俺の気持ちは変わらないから。だからその証拠にこの指輪を渡すよ。
祐介より愛しのさっちへ」
私は、この手紙を読んだ後、心に溜まったモノが溢れ出し号泣した。
お母さんは泣いてる私に「これを預かったの祐介が亡くなった日の夕方なんだよ」
私は泣きながら、お母さんの言葉を聞いた。
「祐介が仕事の途中に家に来てね?『まだ気持ちの整理付かないから整理が付くまで預かっといてくれ』って持って来たの。すぐに指輪だと分かったわ。ごめんね?こんな形で渡しちゃって…」
私は、体が震えた。
ゆうちゃんが、大切だった。ゆうちゃんは、私の生き甲斐だった。たった一人の、理解者だった。
家族がいない私に『俺がさっちの家族になってやる』って言ってくれたのに。
なんで、私の前からいなくなるの?
帰って来てよ!!
帰って来て、いつものように笑ってよ!!
帰って来て、いつものように私を抱き締めてよ!!
帰って来て、いつものように私の頭を撫でてよ!!
帰って来て、いつものように私の手料理食べてよ!!
帰って来て、いつものように一緒に寝てよ!!
帰って来て、また私に『愛してるよ。さっち』って言ってよ!!
帰って来て、優しくキスしてよ!!
帰って来て、一緒にお風呂入ろうよ!!
まだ、約束いっぱい残ってるんだよ?
今度の日曜は休みだから、カラオケに行くって言ったよね?
カラオケ行った後、温泉行こうって言ったよね?
だから、帰って来てよ!!!!
ゆうちゃんが帰る場所は、ココなんだよ?
だから私の前から、いなくならないでよ!!!
両足が無いなら、私がゆうちゃんの足になるからぁ!!!
時間を平成19年7月12日の朝に戻して?
そしたら私、ゆうちゃんを仕事に行かせない!!!
仕事に行くゆうちゃんに『ゆうちゃんは今日の夜、交通事故にあうから!!仕事行っちゃ駄目っ!!』って言うから。
外出させないから!!!
私も仕事休んでゆうちゃんと一緒に過ごすから!!!
神様が本当にいるんだったら、今すぐ時間を戻して?
お願いだから~!!!!
もう、嫌だ!!!!!
私も、ゆうちゃんトコ行きたいよ。
一緒にいたいよ。
ゆうちゃんと、一緒にいたいよ。
ゆうちゃん。
逢いたいよ。
一人は嫌だよ…
平成19年7月12日
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