俺、最後の最後まで母ちゃんに心配かけさせちまった。本当にごめんな。
俺が3歳の時、父ちゃんが事故で死んで、それから再婚もせずに女手一つで俺を育ててくれた。生活を支えるために朝から晩までずっと働いて、小さい頃俺はよく寂しい思いをしてた。
俺を育てるためにあんな働いてくれてたのに、俺は寂しさを紛らわせるために夜遊びをするようになった。そしていろいろ問題も起こすようになった。
あん時の俺、ほんとばかだったな。学校に呼び出されるたび、母ちゃんは何回も頭下げて、「すいません、すいません」って謝ってた。なのに俺は強がって「何で来たんだよ!」なんて言ってた。素直にごめんの一言も言えなかった。
高2の夏、友達とバイク乗ってた時に急に飛び出して来た子供をよけようとして、思いっきり転んでしまった。
それからの記憶はなくて、気がついたら病院のベッドで寝てた。目覚ました時母ちゃんが泣きそうになりながら俺の事見てて、俺病人だっつーのに平手で思いっきり殴られた。「ばか!」って言って号泣してた。
あんなに泣いた母ちゃん初めて見た。そん時、今までこんなに母ちゃんに心配かけさせてたんだなって初めて気付いた。もう母ちゃんを泣かすような事はしたくないって思った。俺泣きながら小さい声で「ごめん」って言った。
俺は結構重傷だったらしく、手足折って頭も打ったらしかった。だけど後遺症もなく、1ヵ月ぐらいで退院できた。
入院してる間、仕事あるのに母ちゃん毎日来て看病してくれた。恥ずかしくて言えなかったけど、すごい嬉しかったよ。
月日が流れて、俺は大学には行かず、働く事にした。
そして仕事にも慣れてきたある日、携帯に電話がかかってきた。
「お母さんが倒れました」って。急いで病院に駆けつけた。腕に太い点滴付けられて苦しそうに母ちゃんが寝てた。医者に聞いたら癌だって。しかも末期癌。
すでに全身に転移しててもう長くないって告げられた。「お母さんは前から自分が癌だって事知っていたんだけど、息子には心配かけたくないから黙っててくれって言われたんだ…」
何でだよ。何で言わなかったんだよ。何で俺には心配させてくんねぇんだよ。悲しくて寂しくて悔しくて、柄にもなく大泣きしてしまった。
次の日の昼、母ちゃんは死んだ。最後1回も目覚まさずに。
ごめんな。なんの親孝行も出来なかった。心配ばっかかけて、迷惑ばっかかけた。出来の悪い息子だったよな。本当ごめんな母ちゃん。あんたは世界一の母ちゃんです。ありがとう。
その後母ちゃんの遺品を片付けてた時に、見覚えのない俺名義の通帳と手紙を見つけた。
「○○へ
あんたがこの手紙を読んでるときには、もう私はいないんだろうね。
病気の事黙っててごめんね。仕事で健康診断があった時にね、初めて知ったんだ。でもその時すでに癌細胞がいくつかあったの。手術してもお金かかるし、あんたももう一人で生きていける年まで育ってくれたから、母ちゃん手術しなくていいですって言ったの。もっとあんたの顔見ていたかったけどこればっかりはしょうがないよね。ごめんね。
母ちゃんはあんたの母親で本当に幸せでした。父ちゃんが死ぬときに、「○○は絶対に私が守るからね」って約束したの。母ちゃん約束守れたかな?
覚えてないかもしれないけど、あんたが4歳の時に言ったんだよ。「父ちゃんの代わりに僕が母ちゃんの事守るからね!」って。母ちゃん涙が出るほど嬉しかった。
○○は私の子で幸せだったかな?何度も言うけど、私は幸せだったよ。あなたは私の宝物です。自慢の息子です。本当にありがとう。
母ちゃんより」
涙が止まらなかった。何度も読んで、何度も泣いた。通帳には73万入ってた。
母ちゃん、ありがとう。俺母ちゃんの子供で本当によかったよ。幸せだったよ。迷惑ばっかかけた俺を許して下さい。母ちゃんが作った飯の味とか絶対忘れないから。こんな俺を産んでくれてありがとう。
あんたはおれの自慢の母ちゃんです。
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