一昨日、結婚式だった。
新居がまだ未完成のためしばらくは嫁とは別居。
昨日一人で自宅に戻ると、親父が一人で酒を飲んでいた。
「お疲れ様。昨日はありがとう。」とオレが言うと、オヤジは無言で立って、
冷蔵庫からスパークリングワインを一本持ってきた。
無言の乾杯。オレもオヤジも一口飲んでグラスを置いた。
オヤジがしみじみと、「お前の結婚を見届けて、一仕事終わった気分だ」と一言。
すると、しばらくしてオヤジは突然ボロボロと涙を流しだした。
オレは小さい頃、足の病気のため3歳の頃から4年間ほど義足生活をしていた。
原因不明の病気だったそうで、あちこちの医者を駆けずり回ってくれたらしい。
歩けないオレをおぶって、毎日のように病院へ通った日々。
一生義足で暮らさなくてはいけないかもしれない。そう言われたこともあったという。
神社で式を挙げている時、その想い出がよみがえって、涙をこらえるのに必死だったそうだ。
泣き止んだオヤジが、またオレのグラスに酒を注ぎながら、
「これでもうオレがしてやれることはない。これからはお前が嫁さんと子供に自分の責任を果たす番だ。」と言った。
「ありがとう。頑張るよ。」と答えた。
初めてオヤジに、心から「ありがとう」と言えた気がする。
新居に引っ越すまでのあと3週間、出来るだけ毎日オヤジと酒を飲もう。
今日はオヤジの大好きな芋焼酎を買って帰るか。
一仕事
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