学生時代、喧嘩が強くて有名な先輩がいた。
ある日彼に「一家に一台先輩がいれば、防犯対策はバッチリですね」と言うと「いや・・・そうでもないんだよ」と、
彼の自宅に強盗が入った時の話をしてくれた。
深夜、不審な物音で目を覚まし、階下へ様子を見に行った母親。
リビングでばったりと、強盗と鉢合わせしてしまう。普通の女性であれば悲鳴を上げるような場面であるが、彼女は違った。
「あなた、早く逃げなさい!」
包丁を握り締め、居直りを決めたらしい強盗に彼女は言った。
しかし、悲劇は幕を上げてしまう。
母親の脇を音もなくすり抜けた生き物がいた。
警察犬養成所で訓練を受けるも、「好奇心が強すぎて適正なし」と判断されこの家に払い下げられた純血種のジャーマンシェパード、ビリーである。
ビリーは唸り声を上げる事もなく強盗に飛び掛るとそのまま床へ引きずり倒し、包丁を奪った。
次に「どうした!」と、この家の家長であり柔道師範の父親が現れた。
ビリーに組み伏され、床で暴れる強盗を目にするや、「ビリー、どけ!」と強盗に寝技を披露。
そして騒ぎを聞きつけた長男でキックボクサーの兄が「親父、混ぜろ!」と参戦。
リビングは地獄と化した・・・
遠い目をして語り終えた先輩に、
「で、先輩は何をしてたんですか?」と尋ねると、彼は答えた。
「俺は・・・隣の部屋に隠れて、110番通報をした」
怖くて止められなかったそうです。
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