私には父がいない。
私が10歳くらいの時に外に恋人を作り、その人との間に子供を作り、出て行ってしまった。
正式に離婚したのは私が15歳くらいの頃のようだが、養育費も途中で途絶え、母は女一人で兄妹3人を抱えてずいぶん苦労していた。
末っ子の私はずっと「自分は既に愛のなくなった夫婦の間にうっかり生まれてしまったやっかいものなんだろう」と思っていた。
常に「自分は”いらないもの”」そう思ってた。
高校生の頃、家の片づけをしていた時、古い封筒がみつかった。
「最愛の○○(父の名前)ちゃんへ」
父のノートも見つかった。
・・・他の女性への愛を語る文ばかりだった。
くやしかったし、悲しかった。なぜ、生涯愛せないような女性と無責任に・・・。
せめて私を生まなければ母の負担も少しは楽になったろうに。
つい最近になって、母の元でたんすの隅から一枚の写真を見つけた。
父と母と兄と姉。母のおなかは大きい。そのなかにいるのは、私。
母が気にして父の写真はなるべく隠してしまっていたらしい。
みんな嬉しそうに笑っている。
・・・よかった、私も愛情を受けて生まれたんだ・・・初めてそう思えた。
その後、父の気持ちは変わってしまったのだろうけど、私の生まれたときには間違いなく私にも、母にも精一杯の気持ちを贈ってくれていたに違いない。
まだ父を心から許せるわけではないけれど、自分の存在を少しだけ許せた。
やさしい笑顔の父を少しだけ好きになった。
自分が嫌いだから写真も大嫌いだった。
プリクラ全盛期に高校生だったのに、プリクラ撮った事すらない。
でも写真って素敵なんだね。そこに愛を写せるなんて知らなかったよ。
自分と、今同居中の彼氏。これからどうなるか分からないけど、今はまだ間違いなくある愛を残しておこうって思った。
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