5年前の、ある梅雨の日の出来事。
会社で昼食を食べているときにそれは起こった。
友人と会い向かいの席で話をしながら食事をしていると、
席の横にある窓から友人が何気なく雨の降る景色を見た。
食堂は2階なのでその窓からは町が見渡せる。
窓の外を見る友人に異変が起こった。
景色を食い入るように見たまま固まってしまったのである。
そして表情が見る見る恐怖に歪んでゆく。
「おい、どうしたんだよ」
話しかけても動かない。
友人の視線につられるようにして自分の視線も窓の外へ行く。
外は雨だった。そして異常な物にすぐ気付いた。
目の前に立ち並ぶ電柱。
その電柱のてっぺんに近いあたりに老婆がいた。
それも腰から上だけが、斜めに突き出していたのである。
雨ではあったがその老婆の顔はやけにはっきりと見えた。
その老婆の顔は二度と忘れられないほど異様であった。
その目も鼻も口も、つまり顔の造作の一つ一つが
奇妙なほどに顔の中心に寄っていたのだった。
そして不釣合いなほど大きな口は顔が歪むほど笑っていた。
雨の日の出来事
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幽霊の正体 見たり 枯れ尾花。