ある夜、大量のお刺身が夕飯のテーブルに並んだ。
普段よりもずっとずっと多くて、
「なんじゃこりゃ」
って思った。
母が
「お父さんが買ってきたのよ」
って言って、食事ははじまった。
そのころは父とご飯を食べるなんて、もうなかった。
自分でも、もううちの両親はだめだろうって思ってたころだったし。
案の定、両親は離婚して。
でもさ、父ちゃん。
いなくなるならいなくなるって、そう言ってよ。
お刺身の次の日、父の荷物が根こそぎなかった。
何も言わずにいなくなるなんてずるい。
お刺身買って来てくれてありがとう、だって伝えてないのに。
その日の夕飯は、私の忘れられない食事になった。
コメントを残す