5年前、生まれてから17年間住んでいた家を引っ越した。
家族のみんなは引っ越すのがうれしかったみたいだ。
設計段階から大騒ぎで。
でもおれはうれしいどころか悲しくて仕方なかった。
ものごころつかない時からずーっとおれを育ててくれた家なんだから。
引越しはおれの関係ないとこで進んでるみたいだった。
新しい家は住んでたとこから電車で15分、しかも同じ路線だったから、
引越し当日は朝古い家を出て学校へ行き、で帰りはそのまま新しい家へ直行。
全然引っ越した実感がなかった。
新しい家に着いた日の晩、おれは家族に隠れて泣いた。
もう誰も住んでない家が、一人取り残されたようでかわいそうでかわいそうで・・・
本当に大泣きした。
次の日もまたおれは泣いた。
で三日目、住んでいた駅にある床屋に行きがてら、数日前まで確かに生活してた家に寄ってみたんだ。
当たり前だけど誰もいなくて、なんにもなかった。
そこでおれはまた大泣きした。
泣きながら思ったんだ、たぶんおれにとってこの家も含めて「家族」だったんだろうなって。
ちゃんとお別れを言わなきゃって思った。
今まで本当にありがとうって。また寂しくなったら来るからって。
引越しの日は言えなかったことを言えたような気がして、おれは本当にすっきりしたのを覚えてる。
その夜からもう泣くことはなくなった。
本当に狭い家で、おれの部屋で家族みんな寝てたけど、試験勉強のときとかみんなを起こさないかひやひやしてたけど、
洗面所もなくて、テレビも1台しかなかったけど、そんな家のおかげでウチの家族は仲がよいのかもしれないな。
今あらためて思うわ。
ありがとう、おれの家。
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