俺の爺ちゃんは俺が五歳の時に死んだ。
そしてその爺ちゃんの葬式の時に不思議なことがおこったらしい。
当時幼かった俺は爺ちゃんの葬式のことなんてほとんど覚えてないんだけど、
婆ちゃんが言うには爺ちゃんの葬式が始まるとどこからともなく黒アゲハが飛んできて、爺ちゃんの写真の上に止まった。
そしてその黒アゲハは葬式が終わるとまたどこかへ飛んでいったらしい。
きっと爺ちゃんはあの黒アゲハに生まれ変わったんだと婆ちゃんは言っていて、
子供の俺もずっとそれを信じていた。
その後、俺は当然小学生になったんだけど、
不思議なことに運動会などの行事がある度に俺は校内で黒アゲハを見かけた。
俺は爺ちゃんが見に来てくれてるんだと思い、本当に嬉しかった。
でも中学になった頃から俺は黒アゲハを見かけなくなった。
運動会の日などにそれとなく辺りを探してみても蝶なんてどこにもいなかった。
黒アゲハを見かけないまま数年たち俺は大学生になった。
そんなある日、中学になった妹の運動会があるというので俺も家族と一緒に見学に行った。
ちなみに妹は爺ちゃんが死んだ一年後に生まれたので爺ちゃんとの思い出はまったく無い。
運動会を見学しつつ、ふと上を見るとそこには一匹の黒アゲハが飛んでいた。
ただの偶然かもしれないけど、俺には爺ちゃんが妹を見に来てくれたんだと思えて
恥ずかしながら数年ぶりに泣いてしまった。
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