何年か前の冬。
半野良状態で飼っていた白い彼女を亡くした。
もともと体が弱くて、牙すら折れてしまって、毛づくろいも満足にできなくて、食べる量も減っていって……
最期、神棚の前でダンボール箱に入ったまま旅立った。
泣きそうな自分を必死で抑えて、平静を装って、動物の供養と火葬を行ってくれるお寺にお願いした。
今思えば、自分たちで車に乗せてお寺まで連れて行ってあげればよかったと少し後悔してる。
彼女が居なくなって、どれほどの月日が過ぎたか……ある日、私はこんな夢を見ました。
段差に腰掛けている私の足元に、彼女がてくてく歩いて来た。
私は嬉しくて、「シロ!」って彼女の名前を呼んだ。
彼女は、ウウー って唸ってきて……普段温厚で怒った試しのない彼女の反応に、私はビビってキョドってしまった。
でも、次の瞬間彼女が膝に跳び乗って、丸くなったので……私は嬉しいやら、悲しいやらわからない感情に駆られて「ごめんね。ごめんね…」て、唸られてるのもそっちのけで泣きながら彼女の背をそっと何度も、何度も撫でて……気が付いたら目が覚めてた。
彼女は、私の膝に乗ってグーパーするのが好きでした。
でも、恐ろしいぐらい爪が伸びてて、ジーンズの上からでもとっても痛いのです。
だから、私はひざかけを生贄にしてグーパーしてもらっていました。
あのほつれてボロボロになって捨ててしまっただろうひざかけが懐かしくて、どこかに在ったら…
なんて情けなく考えてしまう。
彼女がどんどんボロ雑巾みたいになって汚れて行くので、私は彼女が膝に乗ることを拒絶するようになってました。
だから、彼女がもう自力で歩けなくなった時、すすり泣きながら丸くなることもできなくなった彼女を膝に乗せました。
でも…まだ、心のどこかに未練と言うか、しこりがあったんだと思います。
夢の中で彼女を撫でた感触、リアルでした。懐かしい触り心地でした。
汚れてるせいで手触りの悪いとことか、生前のままでした。
起きて少し泣いて、それでもどこかすっきりとしていて……死に際も近いってのに不潔症にかまけてしまった私をそれでもどこか気遣って、怒りながらも撫でさせてくれたことが、私はたまらなく嬉しかったです。
今は悲しくないです。彼女が居なくなったことを、嘆いてはいません。
いつでも会えるって気がするから。
そして現在、家には彼女に似た真っ白な彼がいます。
尻尾が真っすぐで長いとことか、歯が弱いのか口臭がちと臭うとことか似てます。
どこからかフラリと現れた薄汚れた子猫で、兄が服の中に入れて温めたりなんてことがあって、大先輩の白黒ばあちゃんには悪いかななんて思いながら飼わせてもらいました。
奥行きたっぷりテレビの上が好きなのかよく乗っていて、今…何気に気づいてしまった。
斜め下から見た 得も言われぬ健やかな顔つきが……古い携帯に残っている頭にイノシシのぬいぐるみを乗せられている彼女の写真に似てるって。
眉間にしわが寄ってて般若っぽいところとかそっくり。
なんか嬉しくなって、また少し泣けました。
戻ってきてくれたんだ てなぜだか唐突に思えます。
彼女、息子が二人いました。そのうちにいなくなって、今はどこでどうしているのかわかりません。
顔もしっかり覚えているので、彼らでないのは解ります。第一年齢が違いますし。
でも………もしかしたら……
なんて考えて、ついニヤニヤしてしまいます。
どちらにしても、うちの家族です。今度はちゃんと面倒くさがらず、言い訳せずに向き合って生きたいと思います。
見てますかシロ。私は元気です。
だからそっと物陰から見守っていてください。
まだ我儘だけど、私、がんばるから。
『黒猫(年齢24歳・♀)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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