当方一人暮らしで、我が家はせせこましいワンルームマンションです。
風呂はユニットバスで扉を開けるとすぐ便器、左側に洗面台と風呂桶といった作りです(極めて狭い)。
で、風呂場の扉なんですが、ノブの下の方に換気窓がついてますよね、ななめの柵で中が見えないようになってるやつ。
分かっていただけますでしょうか…
あれが壊れて30×50cm位の大穴があいてるんです。っていうか以前、酔っぱらって帰ってきた時に蹴り飛ばしてそのままっていうだけなんですが。
仕事も終わって雑多な用事もすべて済ませ、家でゴロゴロしてました。
で、午後11時を過ぎた頃に入浴。
いつもはシャワーオンリーですますんですが正月休みに入ったこともあって、お湯をためて小説一冊もってだらだらと浸かっていました。
一時間も経ったでしょうか、そろそろあがるかと思い体を起こしたときに、ふと洗面台の鏡に目がいきました。
そのとき私は扉を背にして入浴していたので、正面右にある鏡には当然、背後の扉を映しています。
そこには既に見慣れた穴と、その先の足ふきマットが…あらっ?
何か普段と違う雰囲気を感じ、湯気で曇った鏡を手で拭いてみました。
すると、扉の向こう側に小さい人が立ってるじゃありませんか!
って、おいおい日本人形だよ!!
鏡で見ると穴の右端の方、つまり実際には左端に体が半分隠れた状態で、まさにコソーリって感じでっ!
人形がいるって分かった瞬間、意識が飛びました。
しかし幸か不幸か倒れたときに風呂の縁に腰を強打してしまい覚醒。
しばし悶絶して落ち着きを取り戻し、長時間湯に浸かってたんでのぼせたんだろうと思って、もう一度チャレンジしました。
今度は鏡じゃなく穴の方を…
いるよっ!
日本人形は私を恨めしそうに睨んだり、風呂場に入ってくる素振りを見せるでもなくただただ虚空を見つめたままそこに立っていました。
私は途方に暮れました。
全裸のうえに唯一の出口には人形が門番してる。
思い切って扉を開ければ必然的に人形を押しのけることになり、なぜか私にはそれができませんでした。
今思えば、人形に何らかのアクションを加えることにより、別の事態を引き起こしてしまいそうで怖かったのだと思います。
結局、いつの間にか眠ってしまい、起きたときには人形はいませんでした。
それまでの間、人形の方を見ないようにお湯を足し、小説を読み続けました。
ようやく風呂から解放されたとき、時刻は朝の6時を過ぎていました。
実際のところ何時間恐怖に震えていたのかは分かりませんが、確実なのは読み始めたばかりの中編小説を読み終えてしまったということです。
長々と読んでくださった方、ありがとうございました。
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