20年ほど前、大好きだった小説の舞台になったハワイのオアフ島、ノースショアのサンセットビーチを実際に見てみたくなって行った時の話しです。
一人でハイウェイを歩いてた。
ハイウェイなんて名ばかりの片側一車線の田舎道。
ホノルルからバスに揺られて来たけど突然停まって、当時まだ珍しかった携帯電話?自動車電話?に向かって運転手が大声で話してる。
振り向いたヤツは、乗客の俺らに、バスがオーバーヒートしたから次のバスが来るまで待てと‥。
客の老婆が尋ねた。
「いつ来るんだい?」
「一時間くらいだ。」
一時間じっと待つか、景色を楽しみながら目的地まで歩くか、俺は後者を選んだ。
サーフボードを抱えた子供達とすれ違う。
「なあ?サンセットビーチってまだ遠いの?」
「8マイルむこうだよ。」
「そっか、ありがとう。」
1マイルは約1.6キロだから‥13キロも向こうかよ‥待てば良かったかな‥ま、いっか!急ぎじゃないから歩こう。
半分ほど歩いたとこで、喉が渇いた。
田舎の一本道、店も無けりゃ自販機もない‥。遠くの木陰に家族が楽しそうにパーティーをしてる。あの人たちに聞いてみよう。
「すみません、一番近い飲み物の自販機ってどこですか?」
「2マイルくらい先に店があるけど‥喉渇いてるの?」
一家の母親と思しき女性が答えた。
「はい。まあ、2マイル歩きますよ」
(正直、心の中では、2マイルかぁ‥3キロ以上も有るのかよ‥って思った)
「ちょっと待って。」
彼女は家族の元にもどり、両手に違う種類のジュースを持って近寄ってきた。
ご当地の甘ったるいフルーツジュースとペプシ。
「どっちが良い?」
やった!売ってもらえる!財布を取り出しながら、
「じゃあ右のを下さい」とペプシを選んだ。
スッと差し出された缶と引き換えにお札を差し出した。
彼女はニッコリ笑いながら、そっと差し出した手を制し、
「貴方が困ってる人を見かけた時、助けてあげなさい。これはハワイの友情の証。」
そう言って、握った手の親指と小指だけ伸ばした手を回転させるように振り、踵を返すと家族の元に戻って行った。
手の意味が解らなくてキョトンとしたけど、木陰のベンチに座り、貰ったペプシを一気に飲み干す。
(後から現地の人に聞いたらシャカと言うサインで、友情とか仲良しとか、そういった意味らしい。)
少し休憩して、さて、歩こうかと立ち上がった時、また先程の女性が遠くから声を掛けてきた。
「ねぇ?お腹空いてない?」
「大丈夫です。ありがとう!」
「ちょっと待って。これ、持って行ってお腹空いたら食べて。良い旅を!」
と、今までに見た事ないような形の、それこそ外国のイラストやマンガでしか見た事ないような真っ赤な林檎をくれた。
へぇ~!こんな林檎、ホントに有るんだ!って思った。
20年前の、忘れられない出来事です。
あの時飲み物をくれた女性の顔も、会話も昨日の事のようにはっきり覚えています。
その後の生き方を左右するくらい、ものすごく感動した体験でした。
あの方が言った、
「貴方が困ってる人を見かけた時、助けてあげなさい。」
その言葉を胸に、今も生きています。
『まぁ(年齢38歳・♂)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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