同じサークルの陽子は大学の近くに部屋を借り一人暮らしをしていた。
3年頃の事だったと思う、女ばかり6人、陽子の部屋に行って鍋を食べながらコンビニで買ったお酒を飲み雑談をしていた。
冬の短い日も落ちてきて、同じ学部の美佳は眠いと言ってベットに横になった。
飲むといつも真っ先に横になるマイペースな人だ。
その後もなんやかやと話をしていたのだが、いつしか怖い話となり、「こういう話してると霊が寄ってくるとかいうよね~。」誰かが言った。
陽子の部屋は築何年かは知らないが、比較的新しそうな外観で部屋も明るく清潔だ。
1Kで大学から自転車で10分程、手頃な値段で良い所だった。
1年から借りていて今まで怖い目にあったとは聞いていない。
そんな話をしている時、カタカタと音がした。
気になって部屋を見回すと、陽子の後ろにある白い小さなタンスが小刻みに揺れている。
皆も気付いたようで、「地震?」と誰かが言った。
話をやめ、皆が見つめるなかタンスは動きを止めた。
「地震だったのかなぁ~?」
「でも、電気のヒモとか揺れてないよ。」
不思議に思ったが、又すぐに怪談に戻った。
カタカタカタ…
皆少しギョッとして言葉もなく揺れる小さな白いタンスを凝視する。
しばらくしてそれは又動きを止めた。
「又揺れてたよね…?」
確認するように誰かが言った。
「まさかさぁ、怪談してる時だけ揺れたりして?」
私達は試しにもう一度怪談を始めた。
カタカタカタ…
他は何も動く物も無く、タンスだけがまるで一本だけ足の長さが短いイスが揺れるようにカタカタ小さく揺れている。
「うわっ。やばいんじゃないのこれ?」
みんな少し緊張した顔になっている。
そんな中、
「う~ん…。」
ベットで寝ていた美佳が苦しげな顔をしながら起き上がった。
一瞬緊張が解けホッした私が
「どうした?」
と聞くと、
「今金縛りにかかっててさ、何かが胸に乗ってきた。」
そんな中又カタカタカタ…
もう皆怖くて急いで逃げ出した。
タンスの横をすり抜け玄関に向かう。
陽子以外は皆実家から通っており、遠かったので泊まりに行く訳にも行かず、結局彼氏を呼び出して泊まってもらったそうだ。
タンスカタカタはその後はなかった様だが、しばらくしてこんな話を聞いた。
ある朝陽子が大学に行こうと部屋を出て鍵を閉めようと扉の方に向き直ると、扉に赤いものがべっとりと付着している…。
怖くなって実家に電話をかけ母に来てもらったそうだ。
一人ではあまりマジマジと見ることも出来なかったが、母と観察したところ、臭いなどからやっぱり血だろうと言う事になった。
一応警察には届けたが原因は不明。
得体のしれない者の仕業とは思いたくないが、人間の仕業だとしても、それも怖い。
しかしその後卒業まで彼女はその部屋に住み続けていた。
私には出来ない事だ。
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