もう15年ほど前の冬のこと。
同じ会社の子に惚れた。
当時、彼女は、医者と付き合っていた。
僕は安サラリーマン。
初めから勝目無し。
でも、どうしても諦められず、猛アタック。
新宿のジャズバーで深夜まで飲んだ。
帰る方向が違ったので、終電に乗せなきゃと思って新宿駅まで行った。
ホームに上がったら、隣に23時55分発の各駅停車長野行き。
もう、何も考えないで、手を引いて乗せちゃった。
確かもう115系だった思う。
彼女と並んで座ったボックスシート。
寒がる彼女の膝の上に僕のコートを乗せた。
高尾、八王子と降りず、その日はもう帰れない。
大月、塩山、甲府。ひとつずつ列車は止っていった。
そのたびに僕の心は固まる。松本で下車。
おいしい蕎麦を食べたあと、駅前のデパートで買った安物の指輪。
「どこにつけるの?」という彼女の言葉に、「もちろん左の薬指…」
あれから15年。
医者からぶんどった女性に、惨めな暮らしをさせたくないと努力を続け、スキルアップで転職2回。
医者までは及ばないが、そこそこの収入も確保し、それなりに暮らしてる。
今や僕の子供達の母親となった彼女の薬指にされているのはあの時の安物の指輪。
今でも、いろいろと迷い、辛くなった時、時々あの新宿駅のホームに立つ。
今や埼京線が走り、発車のベルは変ったけど、熱い思いのあの頃に戻れるからだ。
人生、諦めちゃいけないと、教えてくれた新宿駅1番線ホームだ。
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