実家の両親に彼が私との結婚を申し込みをしに挨拶をしに来た。
会話は和やかで結婚の話にも触れていたし、
両親も私と彼の結婚を祝福してくれていたが、彼は、「お嬢さんと結婚させてください!」のようなセリフを言えないでいた。
彼は話を切り出すタイミングを失っている様子だった。
結局、彼は確信の言葉を口にせぬまま宴は終了した。
私は彼を送るために玄関に先に出た。
しばらくして、彼も玄関の方にやってきた。
彼は両親にペコリと頭を下げて私の実家を後にした。
私は彼を近くまで送っていった。すると、彼がポツリと言った。
「お父さん、泣いていたよ・・・。」
私はどうして父が泣いていたのか彼に尋ねた。
「○○ちゃん(私)が、先に玄関に行ったでしょ。その時、俺、お父さんに『○○ちゃんを幸せにしますから』って言ったんだ。
そうしたら、お父さんは俺の手を握って、薄っすら涙を浮べながら、『娘を宜しくお願いします』って言ってくれた。」
私はその話を聞いて、目頭が熱くなった。
その後、しばらくして私は彼と結婚した。
たまに実家に帰ると、父は殆どお酒が飲めないのに、夫と酒を飲みたがった。後で聞いた話だが、父は親類に以前、「○○は嫁には出さん!」と語っていたらしい。
しかし、父は夫を本当の息子のようにとても可愛がってくれ、夫をいつも誉めてくれた。
結婚3年目の今年、父が他界した。夫は「お父さんにロクに親孝行をしてあげれなかったな・・・」と言った。
私も、父に親孝行らしい事を殆どしてあげれなかった。
でも父は、息子と一緒に酒を飲めることが出来て、もしかしたら幸せだったのかな・・・と思うことが、慰めになっている。
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