わたしが友人と人でキャンプに出かけた時のことです。
ちょうど台風が日本に近づいている時でしたが、日本上陸はしないと天気予報は報じていたのでキャンプを強行したのでした。
しかし雨こそ降らなかったものの予想外の風の強さにテントを張ることもままならず、飛び込みで民宿に入ったのでした。
そこは旅館と言ってもいいくらいの立派な建物で急な客のわたし達を快く迎えてくれました。
通された部屋は小さな宴会場の隣で、
「普段は使わない部屋でして、多少隣がうるさいかもしれませんが」と申し訳なさそうに女将さんに言われました。
「いえいえ、こちらこそ、無理をお願いしまして」とわたし達は部屋に腰を落ち着けました。
部屋で食事を済ませてお酒をちびりちびりとやっていると、なるほど隣からボソボソと声が洩れてきました。
しかしいつまでも隣の宴会は盛り上がる様子はありませんでした。
わたしは気晴らしに廊下をぶらりと散歩して、隣の宴会場に電気が点いていないので驚きました。
ふすまをそっと開けると誰もいませんでした。
部屋に戻り「おかしいなあ」と思っていると、隣の宴会場からボソボソと人の声が聞こえてきます。
友人達も隣の宴会場を覗きましたがやはり誰もいませんでした。
「幽霊のいる部屋の隣だから空いていたのか」酒に酔ったわたし達は気が大きくなって特に怖いとは感じませんでした。
霊感が強いという友人が部屋の壁を叩いて、
「そちらは亡くなった方ですか?」
と言いました。すると、「トン」と壁を叩く音がしたのです。
「線香でも上げましょうか?」すると、「トン」と音がしました。
「何本くらい必要でしょうか?そちらは人数は…?」
すると、
「どん!どん!どん!ばん!どん!どん!ばん!どん!どん!ばん!どん!どん!
ばん!どん!どん!ばん!どん!どん!どん!どん!ばん!どん!どん!」
と壁中から音がして、わたし達4人は腰を抜かしそのまま気を失ってしまいました。
翌朝目が覚めて、部屋を飛び出すと、女将さんが大量に線香を携えて宴会場に向かうところでした。
女将さんの話ではまだ先代の女将が現役だった頃、台風で多くの犠牲者が出て、宴会場を死体置き場にしたことがあったとのことでした。
それ以来、時々この時期に霊に敏感な人が泊まると彼らに遭遇するのだそうです。
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