これは僕が函館に住んでいた時の話なんですけど、ある日バイクで小樽までツーリングに行こうと思ったんです。
それで、次の休みに行くことにしたんですね。
国道を通ってゆっくり行こうと思ってたので、まず朝早くに家を出てコンビニに寄って腹ごしらえをしてから行くことにしたんです。
そうしたら、そのコンビニにたぶんホームレスだと思われるおじいさんがゴミかなんかを漁っていて、「函館みたいなところにもホームレスっているんだなぁ」なんて思いながらその人の横を通りすぎて店に入りました。
すれ違う時にチラッと見たんですけど、9月とはいえまだまだ暑い時期に薄汚れた冬用の赤いニット帽に、これまた薄汚れたベージュのロングコート、白髪混じりの長いひげといった風貌でした。
で、これはよく考えたりする事なんですけど、何か他人や世の中にとって良い事をすると自分にも良い事が返ってくる、みたいな。
なんかおまじない的なもの。
その時もそれを考えてしまったんですよ。
普段ならそんな人に関わろうなんて思わないんですけど、その日は遠出する訳で、なんか良い事しておけば無事に帰って来られるんじゃないかと、事故とかも起きないんじゃないかと。
だから、そのおじいさんにおにぎりとお茶を買ってあげたんですよ。
おじいさんは一瞬驚いて戸惑ってたんですけど、ありがとうと言って受け取ってくれました。
僕も「良い事したなぁ」なんて思って気分良く出発した訳ですよ。
それで、景色を楽しんだり休憩したりでゆっくり走って、4~5時間で小樽に到着しました。
それで、運河まで行ってバイクを停めて、少し散歩でもしようかなと思って歩いていると、そこのベンチにホームレスらしきおじいさんがいるんですよ。
赤いニット帽と長いひげ。
朝会った人かと思って一瞬驚いたんですけど、さすがに違うだろ。
似てる人なのかな?どこにでも同じような人っているもんなのかな?なんて思いながら歩いて行くと、そのホームレスのおじいさんが顔を上げて僕の方を見たんです。
間違いなく朝のおじいさんでした。
びっくりして頭の中が真っ白になって立ち止まってしまったんです。
すると、おじいさんは立ち上がりこちらに歩いて来て僕に話しかけて来たんです。
「兄ちゃん、すまねぇけど昼飯もご馳走してくんねぇか?」
って。
僕はそのよくわからない状況に恐怖を感じたので、財布から千円札を一枚取り出すと、そのおじいさんに渡してその場から走り去りすぐにバイクに乗って帰りました。
色々考えてみましたが、電車や車を使って小樽まで来たのであれば僕よりも先に到着していても不思議は無いですが、僕はその人に小樽に行くってなんて一言も言ってないんです。
しかも、その目的も僕に昼飯をご馳走してもらう為だとしたら意味不明。
電車賃を払えるのであればそれで昼飯を食べた方が絶対良いですし。
この出来事がなんだったのかは今でもわかりません。
コメントを残す