突然弁護士が現れ、私が山の所有者であると告げられた。
相続権が巡りめぐってそうなったらしい。
本家とはまったく付き合いもないほど遠縁だが、山が本家の近くということもあって一応連絡を入れた。
管理費だけでもマイナスなので放棄する旨を伝えると、現当主が山を正式に所有したいと言い出し、あれやこれやの手続きを済ませてハンコ料というものを貰った。
翌年、友達と本家のある県へ遊びに行った時のことだ。
「私、この近くに山を持ってたんだよ」
と自慢?したら、皆なぜか
「見に行こう」
と言い出した。
なんの変哲もない田舎の山だし、てっぺんまで登ったところで遠くに海が見えるくらいでつまらないと言ったんだが、押しきられて行くことになった。
本家に立ち寄ると当主はおらず、奥さんに
「山に登りたい」
とお願いしたら快くOKしてくれたので、ふもとまで車を乗り付けて登山した。
山はちゃんと道がつけてあって、崖をよじ登ったり四つん這いになったりしなくても山頂まで生けるようになっていたが、私たちは少し無理めなショートカットを試み、全員滑り落ちた。
泥だらけになったくらいで怪我もなく、すぐに元の道に戻れる程度の滑落だったのだが、もう少し下に別の道があるのが見えた。
獣道というには人工的な感じがするし、何があるのか行ってみる事にした。
行き止まりになった所に犬小屋みたいなものが置いてあって、線香立てと花瓶があり、誰かが時々来ているようだった。
皆てっきり、本家で飼ってた愛犬の墓だと思って手を合わせ、犬小屋の中を覗くとしゃれこうべが3つあった。
大きいのひとつと小さいのふたつ。
皆で顔を見合せ、登山は切り上げてふもとに戻った。
本家に礼を言って早々に立ち去ったが、冷静になって思い返し、ようやく人間の頭蓋骨はおかしいと気付いた。
話し合った結果、携帯から警察に電話して発見の経緯を話すことにした。
どうなったかというと、しゃれこうべは当主の愛人とその子供達で、体は別の場所に埋まっていたそうだ。
当主は殺人は否認。
何も知らないと言ってるらしいが、遺体損壊遺棄の容疑で拘留中。
私たちも何度も警察に呼ばれて大変な目にあっている。
恐ろしいのは、当主の妻はとっくに子供を連れて離婚し、本家は当主と当主の両親しかいなかったと聞かされたことだ。
とっくに家を出ていった元妻の写真は、確かに私たちに山に入っていいと言ってくれた人だった。
連れて出た子供は3歳と2歳の年子で、愛人の子供達も同じ年齢だったそうだ。
私は元妻と愛人が入れ替わっているのではないかと考えたが、警察によると元妻とはちゃんと連絡が取れたという。
愛人の写真は元妻と似ても似つかない顔で、愛人の幽霊というわけでもなさそうだ。
頭部と胴体を切断し、頭蓋骨だけ供養していたのも謎。
当主であれ誰であれ、とにかく本当の犯人がちゃんと捕まって、あのしゃれこうべの主たちが安らかに眠れますように。
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