当時付き合ってたタメの彼女が毎日同じオッサンに痴漢にあっていた。
車両を変えても時間をずらしても毎日必ず目的は達成するという一本筋の通った筋金入りの痴漢だったらしい。
男としてある種の尊敬に似た感情を抱きつつも、彼女の頼みにより学校をサボり囮調査実行。
当日、同じ車両に乗り少し離れた位置から彼女を監視。
すると乗降時の人の動きに合わせ、ごく自然に彼女に近付く一人のサラリーマン。
普段では気付かないであろう凄まじく滑らかな動きで彼女に近づいていく。
彼女がうつむき、次第に表情が暗くなる。
彼女にアイコンタクト。
彼女は泣きそうな顔で俺に向かって頷く。
奴は既にベストポジションを確保。
「いちいちやりやがるな…このオッサン…」
当時バスケ部だった俺はリバウンド時のゴール下のポジション争いを思いだしていた。
「もしあんたと違う出会い方していたら…」
唇を噛み締め、俺は静かに、かつ素早く奴に近付く。
これだけのスキルを持った好敵手を、この手で捕まえなくてはならない運命を呪いながら。
人の流れに紛れ、息を殺して奴の背後にポジションを取る。
痴漢は現行犯が大原則だ。
現場を押さえ損ねれば、逆に冤罪でこちらが不利になる。
相手は背後にいる俺を既に認識している。
しかし奴のスキルは実に巧妙だった。
どの角度からもこちらからは奴の手元は明確には確認できない。完璧なスクリーンアウト。
しかし彼女の反応を伺うと、断続的に行為に及んでいることはほぼ間違いない。
俺はただひたすら待った。
自分より格上の相手からリバウンドを奪う千載一遇のチャンスをひたすら集中して待った。
そう簡単にチャンスは来ない。
待つんだ。
既に彼女の普段の乗換駅から三駅が過ぎていた。
彼女は何故か噴怒の表情に変わっていった気がしたが、この車両には俺とオッサンだけ、二人だけの世界のように感じた。
奴は微動だにしない背後の俺の存在を少しずつ忘れかけてきたように思えた。
一方俺は、五駅かけて奴のお触りスキルのリズムを捉え始めていた。
付け入る隙がないと思われた奴のお触りテクニックにも、実は独特のリズムがあった。
「なるほど電車の揺れに合わせているわけか…フッ、いちいちやりやがるゼ…」
手元は相変わらず確認出来ないものの、俺はほぼ完璧に奴の呼吸を盗むことに成功した。
いける。
次だ。
次の呼吸。
勝負だ。
俺は勝利を確信した。
乗っている車両がカーブに差し掛かる。
電車の重心が右へ僅かに傾く。
刹那、奴の肩がピクリと反応する。
その反応よりほんの一瞬早く、僅かな隙間から俺の右手がボール(彼女のケツ)へと滑り込む。
勝った。勝ったぞ。
「オイ!!!!いつまでやってんだよゴルァ!!!テメーら二人!!!!」
彼女の罵声が車両にこだました。
(゚Д゚)←俺&オッサン
怒りと涙でグシャグシャになった顔をした女子高生の魂の叫び。
そのお尻を手と手を重ね仲良くまさぐりあっている俺と好敵手(ライバル)。
彼女の阿鼻叫喚が響き渡る満員電車の中、周囲のリーマンや学生に一瞬にして揉みくちゃにされふんづかまえられる俺達二人。
次の駅で数十人に引きずり下ろされたとき、一瞬目があったオッサンの顔は
「お前も結構やるじゃん」
そう言っている気がした。
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