自分がまだ小さい頃のこと。
近所では沢山の猫を見かけたんだ。
町営の団地に住んでいて、排水溝などの設備もあった。
高低差がある場所などは、コンクリで覆ってあって、地面から1メートル以上も高くなっている事もあった。
小さい自分は、そのコンクリの壁をよく見上げたものだ。
ある時、近所の猫を後ろから追いかけていた。
そして、コンクリの壁に開いている配水管に猫が入っていくのを、自分はそのまま追いかけた。
排水管を覗き込むと、猫がこちらを振り返って見ている。
目線を送り配水管の向こう側をみると、地面があり草も生えていて、まるで春のような感じの場所があった。
小さい自分はその光景を目にして、心の中で、ああ、いいなあ…ここをくぐれたら行きたい、と思った。
ずっとその事が気になったまま、時だけが流れ…最近になって、ふいっとその場所に通りかかる事があって、そうだ、あれはどうなっているのだろうか、と確認すると… 排水管の先は真っ暗で何も無かった。
排水管は地中に埋まっていて、覗き込んでもただ暗いだけなのだ。
しかし、未だにあの光景を忘れる事が出来ない。
ひょっとしたら、猫だけが行ける世界があるんじゃないかと、今でも、心の中でひっそりと信じている。
コメントを残す