4年前、父親の葬式の前夜でのことでした。
長男である私は、翌々日の告別式の挨拶文を実家で書いていました。
夜の11時過ぎ、表で人の騒ぐ声が聞こえてきました。
最初は酔っ払いの喧嘩かと思いましたが、
「殺されるー!!」
という女性の悲鳴が飛び込んできました。
咄嗟に表に出て行くと、若い女性が血を流して倒れ、男が走り去っていくことでした。
私は起き出してきた母に
「救急車!電話!」
と叫んで、
気付くとパジャマにサンダル姿で男を追いかけていました
追いかけながら、冷静になってきて
「追いついたらどうしよう」
とか考えていました。
100メートルほど走ると、男との距離が近づきました。
先を走る男が道を逸れて、脇の畑に逃げこみ男は茶畑の影でしゃがみこました。
息を整えて居るようです。
私は丸腰のまま飛び込むのが怖くなり、畑と道の境界に置いてあるジャガイモ大の石を2,3個男に投げつけ、命中と同時に男に飛び掛りました。
それから無我夢中で、どうにか男を押さえつけ、履いていたサンダルで滅茶苦茶に男をひっぱたき、抵抗しなくなったところで、男のベルトを抜いて手を縛り実家の方に引っ張って行きました。
男は泣きながら
「本当にすいませんでした。就職が決まったんで警察だけは勘弁してください」
と哀願してきました。
中学校以来十数年ぶりに人を殴った興奮で思わず
「テメーみたいのが居るから文章が進まねーんだよ!!」
と男には訳の分からないことを叫んで、サンダルで後頭部を引っ叩いてやりました。
家の前まで戻ると女性は、近所の人たちに保護されていましたが、額を割られてひどい出血でした。
彼女の前に男をひざまずかせ謝らせると、女性は再び泣き出しました。
そうこうするうち救急車が来て彼女は病院に連れて行かれ、続いてパトカーが5,6台来て男はしょっ引かれていきました。
小一時間現場検証に付き合って、その後警察署で調書作りに朝の4時ごろまで拘束され、2夜連続の徹夜でボロボロになって葬儀を行いました。
葬儀で感じたのは、天国に行った父が守ってくれたのかなと思ったりしました。
とにかく普段の自分では考えられない行動力のある一夜でした。
その後、警察署で表彰されたり(金一封は無い)女性のご両親がお礼を言いに来たりしましたが彼女とは顔を合わせずじまいでした。
またその男は、某大学の4年生で、被害者の女性の近所だったそうで、事件後加害者の一家は居たたまれなくなり、どこかへ引っ越したそうです。
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